ものがたり

「木工房SEEDS」 佐々木さんご夫妻

ご夫婦で営む完全オーダーメイドにこだわる木の工房

木工房SEEDS 佐々木さん

茨城県常陸太田市里美地区の中部、小妻地域にある “木工房SEEDS”。ここは、完全オーダーメイドの家具をつくっている木の工房です。この工房を営むのは、里美に住んでから7年目という佐々木武さん、路子さんご夫妻。お二人は、飛騨高山にある“森林たくみ塾”で木工を学ばれていたときに出会われ、その後ご結婚されたといいます。

茨城県常陸太田市里美地区の中部、小妻地域にある “木工房SEEDS”。ここは、完全オーダーメイドの家具をつくっている木の工房です。この工房を営むのは、里美に住んでから7年目という佐々木武さん、路子さんご夫妻。お二人は、飛騨高山にある“森林たくみ塾”で木工を学ばれていたときに出会われ、その後ご結婚されたといいます。

木工房SEEDS 佐々木さん

埼玉県浦和市のご出身の佐々木さんは、元々田舎暮らしには興味があったといいます。飛騨高山の学校で木工を学び、個人の工房で修行をしたあと、親しい友人を頼りに最初に茨城県の大子町に移住しました。大子町には12年ほど住み、7年ほど前に工房の移転をきっかけにして里美に引っ越してきたといいます。

「里美の人たちってお互いのことを褒め合う方が多い気がしますよ。あとは、みなさんおっしゃるかもしれませんけど、よそ者を受け入れることに慣れているのかもしれませんね」。

木工房SEEDS 佐々木さん

工房に取材に訪れて最初に目に止まったのは、駐車場の横に立てかけられた木板の数々。しばらく眺めているとそばにいた佐々木さんはこんなふうに教えてくれました。

「丸太をひいたあとは、あえて雨にあてて5〜6年さらしてアクをとるんです。それから屋根のあるところに入れて、風通しを良くしながら2〜3年乾かします。木の種類にもよるんですけど、材料として使うまでにだいたい10年ぐらいかかるんですよ」。家具を一つつくるのに想像していた以上の手間と時間がかけられていることにあらためて驚きました。

木工房SEEDS 佐々木さん

工房内を一通り案内してもらいながら、木工作家としてのやりがいを伺ってみると…。

「やっぱりお客さんと直にやり取りしながら、こういう木にしませんか?こういう形にしませんか?と話をしながら進められることが楽しいですかね。そうして、自分が時間をかけてつくった家具に満足してもらったときは本当にやりがいを感じます」。

木工房SEEDS 佐々木さん

「お客さんと長いお付き合いができるとその人の好みや生活スタイルがだんだんと分かってくるんです。だから、こういうふうにしたらどうか?という提案ができるんですよね。最初は、木のスプーンなどの小物を買ってくれた方が、次は椅子を、その次にはタンスを注文してくれたりなんてことも結構あるんです。そういうのは素直にうれしいですよね」。

木工房SEEDS 佐々木さん

工房を一通り案内してもらったあとに見せてくれたのは、漆の樹液をとる際に使用する桶。漆の採取と塗りを担当されている妻の路子さんは、夫の武さんと一緒に家具の製作も行っています。漆は専用の鎌で木に傷をつけて、そこから垂れた樹液を丁寧にとるのだといいます。

木工房SEEDS 佐々木さん

木でつくった器に木から採取した漆を何度も重ね塗りしていくと、独特の艶が美しい器に仕上がります。実際に手にとって触ってみると、軽すぎないちょうどいい重さで、木ならではの独特の手ざわりと温もりが感じられました。

 

地域の仲間とともに取り組む木のプロジェクト

木工房SEEDS 佐々木さん

佐々木さんは、ご自身の仕事とは別に“里美の杉を日常へ”をコンセプトに里美地域で活動している“malsa”というプロジェクトにメンバーの一人として参加しています。

このmalsaが目指しているのは“木を植える→切る→使う”という里美の森のサイクルをより円滑にすること。malsaプロジェクトは、森林用語で“回る”といわれている森のサイクルのなかで、特に“使う”というところに焦点をあてて活動しています。

メンバーは、木工作家の佐々木さんを含め、地域の大工さんや森林組合の方など森や木に関わる仕事をしている方々。

木工房SEEDS 佐々木さん

こちらはmalsa代表の田中あかねさん。“里美の木を使って何かできないか”という田中さんの想いに賛同して集まった佐々木さんを含む3人のメンバーとともに活動がスタートしました。

2015年の11月に立ち上げを行い、組織の体制を整えたのが翌月の12月。それから最初のイベントに向けて試作やPRなどを行い、2016年の3月に記念すべき第1回目の木工体験イベント“さとみのおくりもの”を開催しました。

木工房SEEDS 佐々木さん第1回目の体験イベントで参加者と一緒につくったのがこちらの子ども用の椅子。お子さん含む4組、合計10名ほどの方々が参加しました。

この椅子は用途によってはちょっとした本棚になるだけでなく、逆さまにすると子ども用の机や台所の踏み台にも使えるといいます。“せっかくつくるなら普段使えるもの、長く使えるものを”というメンバーの想いと工夫が詰まった木工作品です。

「やはりいくら木があっても使われなければ、木を切ることもできないし、植えることもできない。本当に微力かもしれないけれど、こういった体験イベントを通して少しでも木の良さを知ってもらって、使ってもらえたらと思っているんです」。malsaの活動に対する想いを、田中さんご自身の言葉で力強く語ってくれました。

木工房SEEDS 佐々木さん

malsaメンバーの一人、里美地区の隣の水府地区で祖父から営む3代目の大工として活躍している菊池政也さん。活動範囲が常陸太田市全域、さらには県北地域ということもあり、取材に訪れた2016年8月末には翌月に開催が迫っていた“茨城県北芸術祭”の準備で多忙を極めるなか、こころよく取材に応じてくれました。

木工房SEEDS 佐々木さん

菊池さんはmalsaが出展する里美地区のお祭りでも、メンバーとともに体験ワークショップの講師として活躍しています。2016年8月の“さとみ夏祭り”で実施した“カンナ削り体験”。木に実際に触れてもらってその良さを感じてもらいたいとその想いを語ってくれました。

木工房SEEDS 佐々木さん

もう一人のメンバーが、里美地区にある常陸太田市森林組合で働く中野修さん。高校を卒業後、東京の大学に進学し、10年ほど都内の企業で働いていました。3年ほど前に生まれ育った里美地区に戻り、現在はご自身の仕事の傍らmalsaの活動をはじめ、様々な地域活動に取り組んでいます。

「昔、里美は全国でもトップクラスの林業先進地だったと聞きました。全国各地から視察が来るぐらいすごかったらしいんですよ。でも、今は林業で生計を立てているのは里美で数人しかいません。昔に比べて丸太の価格も5分の1ほどに下がってしまいましたからね」。時代とともに変わってしまった現在の里美の林業を少し寂しそうな表情で教えてくれました。

木工房SEEDS 佐々木さん

主要メンバーの一人である佐々木さんも、随時開催される会合に参加してはいろんな活動のアイディアを出したり、メンバーとともに体験イベントの講師を務めることもあるといいます。これからも不定期ながら木工体験イベントを開催していくそうなので、今後のmalsaの動きに注目です。

■malsa(マルサ)プロジェクト
住所:茨城県常陸太田市大中町1661
TEL:0294-82-3180
MAIL:malsa2016.info@gmail.com

 

木工作家としてのこだわりと変わらない木への想いとは?

木工房SEEDS 佐々木さん

栗や桜などの広葉樹を中心に無垢の木材を使用して、使いやすさと手ざわりにこだわってつくる家具や小物の数々。実際に製作を開始する前には、必ずお客さんのお宅に伺うようにしているといいます。ものづくりに対する佐々木さんご夫妻の細やかで真っ直ぐな姿勢を感じることができます。

木工房SEEDS 佐々木さん

「最近はここから車で1時間ほどの範囲でしか仕事をお受けしていないんです。ある程度近くじゃないと、何かあったときにすぐ行けないですからね。特に無垢の材料はそれが置かれる部屋の環境によって、引き出しが動いてしまったり、いろいろな箇所が動いてしまうんです。だから、家具を設置してから最初の1年ぐらいは様子をみて、部屋の環境に合わせて調整してあげる必要があるんですよ。それを最初に行っておけば、そのあとはあまり動くことはないんですけど…」。

木工房SEEDS 佐々木さん

取材の最後にお二人がいつも向き合っている木とはどういうものなのかを聞いてみると…。

「木って本当に面白いんですよね。見た目はどれも同じ木なんですけど、実は一つひとつ全く違うんです。まさに生き物といいますか…。例えば。何年もきちんと寝かしていた木にカンナをかけた場合も、次の日に定規をあてたら少し動いていたりするんです」。

「さらに、私たちの使っているカンナも木じゃないですか。これだって毎日状況が変わりますからね。前日よく切れていたから今日もちゃんと切れるということはほとんどないわけです。でも、そういう木の特性と日々会話しながらやっていくのが面白いんですよね」。漠然とした質問にも関わらず、しばらく考えてからゆっくりと口を開いてくれた佐々木さん。

木工房SEEDS 佐々木さん

ご夫婦が営む“木工房SEEDS”では、今後もカフェ・ギャラリーなどでの展示会やクラフトフェアー・地域のイベントなどに頻繁に出展するそうです。是非、直接会場に足を運んでいただき、実際に手で触れて、あたたかみのある木ならではの良さを体感してみてはいかがでしょうか?

■木工房SEEDS
住所:茨城県常陸太田市小妻町1680
TEL&FAX:0294-82-2336
URL:http://ko-hi-koubou.net/seeds/
※カフェ・ギャラリーなどでの展示会やクラフトフェア・地域のイベントなどに出展しています。佐々木さんもメンバーとして参加するmalsaの活動にも注目です!

■木工房SEEDSの木製スプーンやお箸などが購入できるお店はこちら
・山林堂本店
住所:茨城県常陸太田市東一町2296
TEL:0294-72-0056
営業時間:9:30〜18:00
定休日:不定休
http://www.kujiragaoka.com/sanrindo/

・お休み処 西山の里 桃源
住所:茨城県常陸太田市新宿町576
TEL:0294-73-1300
FAX:0294-73-1301
http://www.life-manage.jp/nishiyama/index.html

・スローパンカフェアシリアペ
住所:茨城県常陸太田市大中町3486-2
TEL: 0294-59-3588

・道の駅ひたちおおた
住所:茨城県常陸太田市下河合町1016-1
TEL:0294-85-6888
FAX:0294-85-6877
http://www.hitachiota-michinoeki.jp/page/dir000002.html

2016年11月18日 金曜日

里美でつくる人