ものがたり

「木の里農園」 布施さんご夫妻

木の里農園 布施さんご夫妻

茨城県常陸太田市里美地区の標高250メートルの山間部にある “木の里農園(このさとのうえん)”。農園を経営するのは、今年で就農19年目を迎える布施大樹さんと美木さんご夫妻。お二人の名前に共通している「木」の字と、里美の「里」の字をもらって“木の里農園(このさとのうえん)”という名前にしました。

ご主人の大樹さんは、もともと東京の出身。大学では“林業”を学んでいましたが、在学中に農業に目覚め、卒業後は新規就農者の教育を行う栃木県の“帰農志塾”で研修をスタート。有機農業についてあらゆることを学び、その後父親が先に里美へ移住していた関係もあり、1998年に同地に移住しました。

木の里農園

妻の美木さんは群馬県のご出身。東京にある大学を卒業後、タイの山岳民族の村で2年間生活されていたという異色の経歴の持ち主。帰国後、京都にある染織工房の修行を経て、興味を持ったのは大樹さんと同じ農業でした。

その後、2000年に大樹さんと出会い結婚。現在は3人のお子さんを育てながら、ご夫婦で力を合わせて有機農業の可能性を追求しています。

木の里農園

布施さんの農業のスタイルは、ニーズありきのものではなく、“まず里美の自然があって、風土があって、それに合わせて野菜をつくって、その季節の移り変わりを食べてもらう”というもの。

“いかに旬の野菜を楽しんでもらえるか、満足してもらえるか”を大切にしているという。この野菜がなぜいま手元に届いているのか、その背景も含めて食べてもらって楽しんでもらいたい。それが、布施さんご夫婦がずっと変わらず大切にしてきた想いなのです。

木の里農園 布施大樹さん

「食って、人によって洋風なものが好きだったり、和風なものが好きだったり。好みやスタイルが違うので、すべての人のニーズに応えることはできないと思っているんです。だからこそ、僕たちはこういう食を提供したい、こういう素材をこう楽しんでほしいっていうのを打ち出していって、それに共感してくれるお客さんが楽しんでくれて、満足してくれればいいかなと」。

木の里農園 農場

布施さんの農園は、自宅から3キロの範囲に様々な形の田畑が約2.5ヘクタール広がり、1年を通してあらゆる野菜を育てています。取材に訪れた初夏に栽培されていたのは、ズッキーニ、きゅうり、いんげん、トマトなどの青々とした夏野菜。

木の里農園 トマト

甘さと旨味がぎゅっと凝縮されて、真っ赤に色づいた木の里農園のトマト。

「有機農業といってもいろいろあるんですけど、うちは“土づくり”からしっかりやっているんです。テクニック的なところでいえば、ほかにも虫を除けるとかいろいろあるんですけど、“土づくり”は野菜づくりの土台になる部分なので、とりわけ重要なんです。使用する肥料も里美の落ち葉などを利用して、自分たちでつくっているんですよ」。木の里農園の野菜づくりにおいて大切にしていることを丁寧に教えてくれた大樹さん。

木の里農園 黒さんご

チクチクとしたトゲが特徴的な“黒さんご”という品種のきゅうり。パリパリの食感で生食や漬物にとても適しています。普通のきゅうりよりもあまり日持ちがしないため、市場にはあまり並ばないのだそう。大根やジャガイモ、ニンジンなど一般的な野菜のほかに、こういったあまり馴染みのない種類の野菜を育てているのも木の里農園の特徴です。

木の里農園 布施大樹さん

木の里農園のお客さんは、一般のご家庭やレストランなどの飲食店。常陸太田市内や近郊であれば、大樹さんとほかのスタッフが直接配達をしています。そのほか、茨城県内各地や首都圏の会員の方々には、定期的に新鮮な野菜をお送りしているのだとか。遠方では、大阪のほうからも注文があるという。

「僕たちは、一般の家庭やレストランと直接繋がっているんで、野菜を食べる方や調理される方の顔を思い浮かべながら、仕事ができるのがいいところですね。そのぶん、プレッシャーも責任も大きいんですけど、やりがいはとてもあります」。穏やかな物腰で、自分たちの仕事について力強く語ってくれた大樹さん。

木の里農園 キャベツ

“畑で野菜をかじった感動をそのままお届けしたい”というご夫妻の想いから、とりわけ大切にしているのが野菜の鮮度。新鮮なうちに届けられるように、常に輸送を考えた荷造りを考えているのです。

鮮度を保つために行っているのが収穫後の野菜の温度を下げる“予冷”という工程。キャベツやブロッコリーの保存は1〜2度が適温のため、収穫後は保冷庫に入れて、出荷までじっくりと冷やします。

ただし、野菜の種類によっては予冷の最適な温度が変わるため、夏野菜などは保冷庫には入れず、年間を通して10度前後に保つことができる自宅近くの“横穴”に保存しているのだという。

木の里農園 野菜ボックス 里山やさい便

定期的に一般の家庭やレストランなどに、旬の10品目ほどの野菜をお届けする野菜ボックス“里山やさい便”。サイズはS、M、Lとあるので人数や予算に合わせて選ぶことができます。

そんな布施さんご夫婦が愛情込めて育てた野菜に添えられているのは、美木さんお手製の“野菜便り”。記載されているのは、野菜の調理方法やレシピをはじめ、手描きのイラストや季節を感じられるメッセージです。あったかくてどこかホッとした気持ちになれる、そんな美木さん手づくりのお便りを楽しみにしているお客さんも多いのではないでしょうか。

木の里農園

5年以上前から、野菜の発送のお手伝いをしているというご近所にお住まいのコガミさん。毎週の発送日前日から美木さんと一緒に野菜の袋詰めや箱詰め作業を行っています。

作業の際に気を遣うことは、トマトなど非常に皮の薄い野菜を傷めないよう取り扱いに十分注意すること。たとえ収穫時に小さくても、輸送中に傷みが大きくなってしまうので、少しでも傷んだ野菜を見分けて、あらかじめ除けるのも大切な仕事のひとつです。

木の里農園 コリンキー

出荷前の作業小屋に置かれていたのは、鮮やかなレモン色の “コリンキー”。まだまだ馴染みが薄い種類ですが、カボチャの品種でコリコリした歯ごたえが特徴的な野菜。皮がやわらかく生食ができるので、スライスしてサラダにして楽しむことができます。

木の里農園 布施美木さん

「大根とかジャガイモとかニンジンとか一般的な野菜をちゃんとつくって、いいものを届けて、おいしく食べてもらうっていうのは大前提なんですけど、たまに変わった野菜を入れてみたりするんです。これどうやって食べるの?みたいな野菜を(笑)」。

「もちろん、食べ方のレシピは付けますけど、それが好評だったり、ときには不評だったりもします(笑)。でも、そういう楽しさ含めて味わってもらうのが、私たちらしいのかなって思っているんです」。飾らない言葉で自分たちの姿勢を語ってくれた美木さん。

木の里農園 布施大樹さん

最後に、里美のよいところを大樹さんに聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「就農当時から僕らはいろんな方に助けてもらっているんで、大変だったということはないんです。里美の人は純粋にいい人が多いと思いますよ。僕らみたいなほかの土地から来た、見ず知らずの人に対してちゃんと付き合ってくれるんで(笑)。きちんと受け入れてくれる懐の深さみたいなものがあるんだと思います。もしかすると、昔から宿場があって人の往来が頻繁にあった場所なので、それが関係しているのかもしれませんね」。

一年を通して忙しく働いているという布施さんご夫妻。今後は、野菜定期便をお届けしている会員の方々に向けた“畑見学会”などを、自分たちのペースを守りながら、ゆるやかに開催していきたいと抱負も語ってくれました。

 

■木の里農園(このさとのうえん)
住所:茨城県常陸太田市大中町2606-3
TEL/FAX:0294-82-2466
URL:http://konosato.com/
Facebook:https://www.facebook.com/konosatofarm/
アクセス:
JR水郡線常陸太田駅よりバスで1時間、タクシーで30分
JR常磐線日立駅よりタクシーで40分
常磐高速道那珂インターより自動車で50分

2016年08月24日 水曜日

里美でつくる人